レッド・ブラッド・イレブン -4ページ目

試練の時

最近Jリーグでは「第三勢力」とも呼ぶべき勢力が台頭している。具体的にはG大阪、広島、浦和らがそれに当たるのだが、これはJリーグにとって歓迎すべき事態である。

数年前までは磐田と鹿島の二チーム程度しか優勝を狙えるチームはいなかったが、それに横浜FMが加わり、他のチームも進境著しい。優勝争いが過酷になれば、それだけリーグ戦は面白くなるというものである。その中でも浦和レッズには大きな期待が寄せられているが、少々苦しんでいる印象を受ける。

前節の大宮戦では、再開から初めての敗戦を喫した。さらに追い討ちをかけるようにエースのエメルソンのカタールのクラブへの移籍。浦和にとって優勝争いををするにしても、トップクラブへと成長するにしろ、試練の時がやってきている。

他にいないの?

Jリーグの中断期間中にいくつかのクラブチームである程度の人事が行われたようだ。

最近では柏が獲得したレイナウドと浦和が獲得したポンテ、それに名古屋が獲得したルイゾンがそれに当たる。レイナウドとポンテは欧州のクラブからの移籍で、二人ともそれなりの実績を残してきている。また、ルイゾンは日韓ワールドカップにも出場経験のある選手だ。だが、どうにも気に食わない。

私はここで挙げた三人を批判するつもりは無い。しかし、Jリーグのブラジル人と韓国人だらけの外国人補強にいい加減うんざりしてきた。

確かにブラジル人選手には無名選手でもヨーロッパで通用してもおかしくない選手がいる。新たな環境への適応も早い。が、ふざけた理由で練習に遅刻したり、ホームシックになって力が発揮できない選手が多いのもまた事実。

Jリーグのクラブチームは少しは他国の選手に目を向けてみたらどうだろうか?例えばセリエAの試合を見ていても、中小クラブの無名選手でも日本代表以上の実力を持った選手が多く存在する。彼等を獲得すれば、安くていいブラジル人選手を引っ張ってくるよりは、よほど日本のフットボールにいい影響を与えてくれると思うのだが。

いつになったら

七月六日の東京ヴェルディ対浦和レッズ戦観戦へ。結果はご承知の通り、7-0で浦和レッズにとっては記録的大勝、ヴェルディにとっては屈辱的大敗となってしまった。

試合は序盤からレッズが主導権を握り、徹底したサイド攻撃から得点を重ねる。七点差がついた後にはプレスを緩めて、カウンター狙いの戦術に切り替える余裕っぷりさえ見せつけた。

対するヴェルディは前節で七失点を喫しているにもかかわらず、ディフェンス陣に選手入れ替えなどの修正点が殆んど見られなかった。「おいおい、大丈夫か?」と思ってしまったが、悪い予感は見事に的中してしまった。

サイドをずたずたに切り裂かれ、ゴール前にはスペースがボコボコ。これでは勝てるはずも無い。見所と言えば、ワシントンと森本の個人技ぐらいだった。

だが、当夜のピッチ上には試合前に配られたパンフレットの予想メンバーにも入っていた選手がいなかった。浦和レッズの10番、エメルソンである。

以前からチームの始動日に遅れるということは度々あった。しかし、今回は何とリーグ戦が再開しても帰ってくる素振りすら見せない。マスコミの報道によるとエメルソンの子供が病院に入院したのが原因と言われているが、それならそれで自主的に練習を始めて、息子の退院後はすぐに日本に行けるようにするのが筋というものではないか。だがエメルソンが練習をしているという話は聞いていない。如何にエメルソンといえど、トップコンディションでないまま通用するほどJリーグは甘くはない。

ジャーナリストのジェレミー・ウォーカーは、自身のコラム上で今回の事件でのエメルソンの対応を痛烈に批判している。そういえば「エメルソン帰化」報道が流れた時にもジェレミーは「あんな奴、日本代表にいらない」とバッサリ切り捨てたことがあった。一般のファンより遥かに現場に触れる機会を持つジェレミーは、それだけ問題のあるエメルソンの人間性をつぶさに見ていたのだろう。

世界ではしょっちゅう練習に遅刻してくるブラジル人選手がクビになったという出来事はさして珍しくも無い。これ以上遅刻を続けるならば、エメルソンがそうならないという保証はどこにも無い。

90分間、攻め切る気持ち

少々時期外れになってしまったが、U-20日本代表について言いたいことがある。

今回のワールドユースで日本はベスト16に食い込んだ。だが、悪く言えば現時点ではこれ以上の結果を期待するのは難しいチームだったと言わざるを得ない。私が見たのは予選最終戦のオーストラリア戦だったが、とにかく連携が劣悪で、くだらないパスミスを繰り返しては自らチャンスを潰し続けていた。

ゴール前での精度も悪い。なかなかシュートにつなげられず、シュートを打っても、ゴールが入る気がしない。得点の匂いが全く感じられない。おそらくテレビの前に陣取ったサポーター達も、私と同じくイラつきっぱなしだったろう。

以前から大熊監督の志向するチームは、守備的なチームであったが、その選択は間違っていたとしか言いようが無い。連携の悪さの原因はひとえにコミュニケーション不足であり、選手同士で話し合う機会など殆ど皆無に等しかったというが、その意味では選手達の責任も重い。しかし、試合中に選手より大きな声で一から十まで指示する監督もどうかと思う。これでは選手達も監督の指示ばかりに頼ってしまうのも仕方が無い。また、不可解な選手起用で不興を買ったのも事実だ。結局、大熊監督は平山ら、才能のある選手を最後まで使いこなせなかったというのが結論になる。

これから若き日本代表がどうなるか分からない。けれど、大熊監督の後任は早期に決めて欲しい。今度は試合開始からがんがん前に行く気持ちを教えられる監督が適任だろう。

諦めるのは早い

元日本代表の前園選手が引退を発表して久しい。アトランタオリンピックに日本代表のキャプテンとして、あの「マイアミの奇跡」の場にも立ち、中田を超える人気を誇っていた過去を思えば、なんとさびしい晩年だろう。こんな彼の姿を一体、誰が予想しただろうか?

Kリーグのチームと契約更新できず、セルビア・モンテネグロのOFKベオグラードの入団テストを受け、落第。そして、引退。三十一歳のあまりにも早く、あっけない幕切れだった。本人も苦渋の上での決断だったのだろう。

引退をサッカー協会に報告しに行った日、偶然にもビーチサッカー日本代表監督としてチームを率い、アマチュア選手だけで四位という好成績を残した、ラモスに鉢合わせた。ラモスはそこで引退なんて早すぎると前園を叱咤激励したという。

これからの前園は実際にプレーするのではなく、普及活動等に参加するつもりのようだが、諦めるのが早すぎるのではないだろうか。

確かにあの外国人顔負けのパワードリブルは出来なくなってしまったかもしれないが、何も芝生の上でやるフットボールにこだわる必要は無い。今の前園にはフットサルやビーチサッカーの日本代表を目指すのも悪くない選択ではないか。

結局最後は

「イナット(意地)だ」

映画「アンダーグラウンド」で、NATO軍の激しい空爆が行われる真っ最中に主人公が平然と食事を続けるシーンがある。そこで先ほどの言葉を言うのだが、セルビア人は総じて意地っ張りだ。外交下手、お人よし、意地っ張り・・・セルビア人は日本人に似た共通点がある。これがきっかけで私はセルビア・モンテネグロに親近感を覚えた。だが日本人が失ってしまったものをセルビア人達は持っているとも感じた。それは誇り、愛国心、闘争心である。

98年の仏ワールドカップにて、ユーゴスラビア(当時)はグループリーグ初戦でドイツと対峙した。何年ぶりかのワールドカップ出場。選手達の喜びもひとしおだろう。しかし、場内に両国の国家が流れた際に奇妙な光景が映った。ストイコビッチも含め、誰一人としてユーゴスラビア国家を歌わないのである。中には薄ら笑いを浮かべる者さえいた。

それもそのはず。現在の国歌は社会主義時代に押し付けられたものであり、本当の国歌ではないと考えていたからだ。愛国心があるからこそ、国歌を歌わない。そんな考え方もあるのである。

元日本代表のラモスは日の丸のついたユニフォームと君が代を聞くと不思議な力が出たと言っている。ギリギリの状況下では気持ちの強さや愛国心の差が結果に反映される。ユーゴの代表選手達が世界から後ろ指を指されながらも戦い抜けられたのは、並の選手とは比べられないほどのそれが備わっていたからだろう。さて日本には・・・?

政治とフットボールの関係

90年のワールドカップにて、オシム監督(現ジェフ千葉監督)に率いられてベスト8に入ったユーゴスラビア代表。だがその先には大きな悲劇が待ち受けていた。先の国内紛争によって、すっかり国際的な悪役国家として認識されていたユーゴは94年のワールドカップ出場権を剥奪されてしまう。ユーゴがワールドカップに出場するのは98年まで待たなければいけない。90年の時点では若すぎた代表が94年時に全盛期を迎えるはずだったが、98年の時点で主力メンバーは30歳を過ぎ、既に全盛期を過ぎた感は否めなかった。それだけに出場できなかったのは惜しすぎる。

この頃からフットボールだけに止まらず、ユーゴのあらゆるスポーツ選手たちは自分とは全く関係ない政治問題に翻弄され続けることになる。

よくフットボールの国際戦は国と国との代理戦争だと揶揄されるが、ユーゴの選手達は決してそうは言わない。フットボールはフットボール、皆が皆そう思っている。政治がスポーツに介入する怖さを身を持って知っているからだ。

残念ながらスポーツと政治は切っても切り離せない関係にあるのは紛れも無い事実である。アメリカはユーゴに住む人々から何を取り上げれば一番傷つくかを熟知していた。だからこその出場停止処分であったのだ。さらに次回へ。

誇りとは何だ?

誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 みなさんはJリーグナンバーワンの選手と言えば誰を思い浮かべるだろうか?思えば二十年にも満たない歴史の中で色とりどりの名選手達がやって来たものだ。だが私は誰がなんと言おうと彼、ドラガン・ストイコビッチを推す。

創始当初のJリーグに来たストイコビッチはその世界最高峰と賞賛されたテクニックで、引退する2001年まで日本の観客を魅了し続けたが、来日当初から受け入れられたわけではない。いや、むしろ来たばかりの頃は先に名古屋グランパスに在籍していながらも、ろくな結果を残せないまま去っていたリネカーの二の舞とさえ言われていた。それに重なるように監督との不和、周囲の選手とのレベル差、そして基準の分からない判定。

だがストイコビッチは決して諦めなかった。自らのプレーでフットボールが魅せて勝つスポーツであることを日本のファンに認識させた。

しかし逆に言えば、彼はJリーグでプレーするべき選手ではなかった。実際はヨーロッパのトップリーグでプレーしていなければいけない選手だったのだ。だが彼の周囲で起こった出来事がそれを許さなかった。

現在のストイコビッチは母国であるセルビア・モンテネグロの協会会長に収まっているが、かつて彼の祖国はユーゴスラビアと呼ばれ、数ヶ国、数種類の人種が混じりあった国家だった。しかし国内紛争が勃発し、昨日まで仲のよかった隣人達が突如として敵になった。国家は分裂し、黄金世代とさえ呼ばれ、ベストメンバーが揃えば、ワールドカップの優勝さえ夢ではなかったチームが分散していった。

それだけではない。セルビアは罪の無いクロアチア人を虐殺する、侵略国家というレッテルさえ貼られてしまった。「全く、お前らは、モンスターか!」。これはストイコビッチが所属していたマルセイユからセリエAのベローナにレンタル移籍していた頃、イタリア人コーチがすれ違った際に吐き捨てるように言った言葉である。後にその原因がわかった。テレビで放送されていたBBCのニュースにクロアチア人の少女が登場し、BBCの取材に受け答えをしていたのだが、それが全く別の意味に訳されていたのだ。紛争は全てセルビア人の責任にされ、それはどの国でも変わらない報道スタイルだった。

政治に翻弄され続けた旧ユーゴスラビアの代表選手達。だがセルビア人もストイコビッチも誇りを捨て去ることは無かった。誇りとは何なんだろう?詳細は次回に。

通用する選手、しない選手

アジア最終予選、ワールドユース、コンフェデ杯と日本フットボール界にとって大事な試合がたて続けにあったが、無事すべて終わり、しばらくベストメンバーが揃うこともなくなる。最も私は正直北朝鮮に勝ったあたりから燃え尽き症候群気味だったが、これらの大会で日本が得るものは大きかったように思える。改めて「個」の力の恐ろしさを強豪国から教えられたからだ。

海外のリーグで活躍している選手は必ずと言っていいほど強烈な「個」を持っている。多少の短所があっても、カバーできてしまうほどの「個」が。「個」が無ければ活躍は不可能だからである。逆に短所は無いが、長所も無いオールラウンダータイプの選手はリーグ戦、Aマッチ問わず苦戦する。当り障りの無いプレーヤーは真っ先に消えていく運命にある。日本はそれを痛感させられた。

短所を埋めるよりは長所を伸ばすほうがいい。気づくまでに随分と時間がかかってしまった。強烈な個性を持った選手がなかなか出てこない今こそ、それが出来る指導者が求められている。

貢献者を選べ!

Jリーグ再開まであと約一週間となり、初練習を始めるクラブも出て来始めた。このまま鹿嶋の独走が続くのか?果たして磐田、浦和の追い上げはあるのか?オシム率いる千葉はどうなるのか?色々と興味は尽きないが、いくつかのクラブは外国人選手の出入りがあったようだ。

そんな中でひとつ興味深いニュースがあった。それは横浜FMがレアル・マドリードのジダン獲得を断念したという内容だった。実は以前から噂はあった。交渉が決裂したのは、条件面での折り合いが付かなかったのが原因のようだ。

思えば、Jリーグに大物外国人選手が少なくなって久しい。東京Vにワシントンの移籍が決定した時、数年ぶりに来た大物選手だとマスコミはこぞつて大騒ぎした。創生期にはあれだけいた大物外国人も、今ではワシントン一人だけ。あの頃が何もかも懐かしく感じる。

だが何も大物だからといって、手当たり次第に呼んでくる必要は無い。Jリーグのクラブチームは将来日本のフットボールに貢献してくれる選手、心のいい選手を雇うべきだ。

最初から金だけが目当ての奴、日本のレベルを舐めてかかって来る奴。来日した数多くの外国人選手の内、こういった奴等が何人いたことか。その多くは何も出来ないまま帰国の途につくことになり、チームは大量の資金をドブに捨てる羽目になる。最近ではイルハンの失敗が記憶に新しい。

プロは金が大切。それは揺るぎようがない事実だが、それだけの選手が活躍できるケースは少ない。クラブの方はクラブの方できちんと貢献者となれるだけの性格を持ち合わせた選手を選ぶのがベストである。いいかげん代理人の言うことを真に受けたり、ビデオだけで判断してしまう外国人強化からは離別すべきだ。