レッド・ブラッド・イレブン -3ページ目

ビッグクラブを喰ってやれ!

昨日の東京ヴェルディ対レアル・マドリード戦をテレビで眺めていたが、試合はヴェルディサポーターの方々が大喜びするだけの結果となった。

レアル・マドリードは、アメリカから中国、中国から日本と数万キロの距離を移動しているうちにフットボールのやり方を忘れてしまったようだ。普段は芸術的なプレーで観客を魅了する白い巨人達は、すっかり精彩を欠き、何もかも「さっぱり」な内容に終わってしまった。おまけに観客数は少なかったし、話題と言えば、戸田がベッカムの顔に唾を吐きかけた云々といった低俗なものに終始した。

一方で相変わらず不調のヴェルディが、この試合では絶好調だった。伝統の華麗なパス回しが機能し、チーム全体にある種の余裕すら感じられた。マドリーのゴールに叩き込んだ三点はどれも見事な形の得点であり、試合全体を見通しても、この試合はヴェルディの試合だったと言っても過言ではない。本当にリーグ戦での不調が信じられないほど見事な試合運びだった。

マドリーは明日に磐田戦を控えているが、ジュビロにもヴェルディ戦を思い起こさせるような試合を是非やってもらいたい。これから海外ビッグクラブの来日ツアーラッシュがやってくるが、その多くは日本のクラブなど歯牙にもかけていない。というよりは、日本のフットボール自体をなめている部分がある。どこのクラブも遠征ではなく、間違いなく集金作業だと認識している。そして、そんな奴等には痛い目にあわしてやりたいと思うのは、一人の日本人として当然の感情ではないだろうか?

昨日の試合はスペインにも中継されていたと聞く。マドリーのサポーターたちは、自分達のチームが負けるところをつぶさに見ていたはずだ。数日後に訪れるビッグクラブの所属するリーグの国々に、日本のフットボールを見せるいい機会だ。「俺達はこれだけできるんだ!」というプレーをやって、存分に実力を見せつけて欲しい。

どうした、玉田?

レイソルの玉田が完全にゴールから見放されている。ストライカータイプでないとしても、毎年二桁ゴールを記録していたのを考慮すれば、ここまでゴールが入らないのは一重に調子の問題とは言い切れない。

今期は開幕からなかなかゴールが入らなかった。チャンスはあっても決められない、ジレンマばかりが募るプレーの連続だった。シュート数ばかりがかさみ、ゴール数はゼロの連続。決定的なシーンを何度も外してきた。

代表でもアジアカップでの活躍は既に過去のものになりつつあり、レギュラーの座を大黒に完全に奪われてしまった。

それでも三十一日から始まる東アジア選手権の先発メンバーには入っている。元々、ジーコのお気に入り選手の一人でもあるし、スーパーサブの適性を持った田中達也の存在もある。玉田にはぜひ奮起を促してもらいたい。

余談になるが、カリオカ(ラモス)は、玉田はFWではなくトップ下で生きる選手だと語っている。http://tochu.tokyo-np.co.jp/00/rrc/20050716/col_____rrc_____000.shtml 狭いスペースでは玉田の持ち味は生かせないと言うのだ。トップ下での起用は無いだけに、一度試してみれば面白い結果が出るかもしれない。

久保はファンタジスタ

足の裏側でポンッとボールを浮かせ、すかさず左足を振り下ろす。ボールの行き先はもう決まっている。強烈なシュートはすぐに相手ゴールに叩き込まれるのだ。

ゴール前での久保のアイデアの豊富さにはただただ驚くばかりである。久保と言えばアフリカ人並の強烈なフィジカルに目が行きがちだが、最大の武器はプレーの独創性だ。久保ほど才能に恵まれた選手は今の日本はいない。中田や中村でさえ、それは例外ではない。

だが、久保は昨年からずっと右膝と腰の痛みに悩まされている。アジアカップも最終予選にも出場できなかった。「あいつさえいればな・・・」と、何度思ったことか。久保の存在があれば、もっと楽に勝ち抜くことも十分可能だったろう。

久保のファンタジスティックなプレーは、今の日本代表には不可欠である。代表復帰となれば、即エースの扱いをされてもおかしくはない。まだ療養中の久保を東アジア選手権の代表に選出した、ジーコの計り知れない信頼度がにじみ出ている。

現在は回復傾向にあるので、私は先発出場をいまかいまかと首を長くして待っている状態である。久保の体調をネットで確認しては一喜一憂している毎日だ。私も、そして多くの日本代表サポーター達も久保の一日も早い復帰を望んでいる。

嬉しいカレン・ロバートの変化

ジュビロ磐田のカレン・ロバートが絶好調だ。

最近は二戦で五得点を挙げた前田にチーム内得点王を譲ってしまったが、それでも合計七得点で堂々の二位であり、まだオールスター前という点を考慮しても、十分二桁得点を狙える位置にある。今節で得点ランキング入りの可能性さえ残されているのだ。

以前のカレンは決してストライカー然としたFWではなかった。むしろドリブル突破だとか、前線からのディフェンスやクロスで、対になったFWとチームの攻撃をサポートするタイプのFWだった。それにお世辞にもシュートが上手いとは言えないし、高校時代に記録したゴール数も大した数ではない。

FWは点を取るだけが仕事ではない。プロになりたてのカレンはそう語っていた。ユース代表で二十五戦ノーゴールという結果にもそのプレースタイルが如実に表れている。しかし、それで通用するほどJの舞台は甘くない。カレンが幸運だったのは、それに若くして気づいたことだった。

今は「俺が点を取らなきゃ、負ける」と思ってプレーしているのがよく分かる。ある種の危機感が芽生えたと、カレン自身も言っている。それが現在のゴール量産に確実につながっている。私としては、この活躍を代表の場でも是非見せて欲しい。もっともっとゴールを決めて、Jリーグを殆んど見ないジーコの鼻をあかしてもらいたいものだ。

ヴェルディの厳しい再生への道

中断期間後のヴェルディが苦しんでいる。ここ最近勝ちに完全に見放され、チームは完全に迷走状態に入ってしまった。

修正点もどこから手をつけていいかわからないが、最も修正しなければいけないのは五試合で二十三失点という破滅的なディフェンス陣である。大量失点した、いずれの試合も守備に全く統一感が感じられない。これでは失点はいつまで経っても減らない。いくら中盤でボールがキープできないのが原因のひとつだとしても、ディフェンス陣の崩壊は最も深刻な問題だ。そう考えると、貴重な外国人枠をフォワードに使ってしまったのはまずかった。真っ先にディフェンダーを獲得するべきだと思ったのは私だけではあるまい。これによって、補強をするにしても日本人選手に限られてしまった。今、必要なのはディフェンスラインの柱になれるプレーヤーになれる選手ではないのか。

そうこうしている内にオジーの解任が決定した。前節の磐田に六点差をつけられて大敗したのを重く見たのだろう。オジーには悪いが、あの結果では監督交代はいたしかたない。いかにオジーが優秀な指揮官だとしてもだ。残念ながら、改善の余地が全く見られなかった。

次こそは、次こそはと言いつづけるクラブ関係者や選手達の言い訳もサポーター達をイラつかせている。堪忍袋の緒の切れたサポーターが物理的な行動に訴える事態にも発展した。だが、逆に言えば、今がどん底である。これ以上は落ちることはないと思って開き直るしかない。再生への道は正に棘の道だが、これを乗り越えられるか。

虐げられし者達の復讐④

鈴木慎吾という選手は、一度は死んだフットボーラーだった。

浦和レッズユースに所属していた鈴木はトップチームに昇格するも、たった一年で無情の解雇通告を受けた。公式戦出場すらないままならなかったのだ。

やがて解雇された多くのJリーガーがそうしたように、社会人の横河電機に入団。だが、プロへの復帰は果てしなく遠い道だった。一度アマチュアへ逆戻りした選手がJの舞台へ立った例は限りなく皆無に等しい。

しかし鈴木は一年間の雌伏の時を過ごし、当時J2に所属していた新潟に入団し、三年間で百試合以上の試合に出場。鉄人ぶりを周囲に見せつけ、翌年からは数チームが奪い合う「鈴木争奪戦」まで勃発した。

二年間の京都在籍後、チームの降格と共に新潟に復帰。溌剌としたプレーで新潟サポーターを沸かせている。

ジーコが好むサイド選手は縦に強いタイプであるが、クロスやフリーキックも得意な鈴木は理想にかなっている。実力も十分だ。一度は死に体になったフットボーラーが日本代表へ入る、もし実現すれば、前代未聞の出来事になりそうだ。

球宴優先に納得

私は以前からオールスターには反対的な意見を持っていた。海外のリーグでは有り得ないイベントであったし、全く無意味な悪しき慣習であるように思えてならなかったのだ。その上、今回のオールスター戦に選出された選手は日本代表の東欧遠征には帯同しないと聞いたときには「そんな馬鹿な」と心の中で叫んでしまった。

だが、ここでちょっと立ち止まって考えてみよう。現在オールスターで多くの投票を集めている選手は、代表に選出されている国内組選手が多い。彼らが東欧遠征に帯同しないのであれば、穴を埋めるために新しい選手を招集しなければいけなくなる。ということは今までお呼びがかからなかった選手も招集される可能性も十分にあることになる。そう考えれば納得できる。

ひょっとしたら、今回のこの件は若手を呼ばないジーコに対する、JFAの強烈な牽制球だったのではないか。いずれにしろジーコは球宴優先を了承した。これでニューヒーローでも出てきてくれれば最高なのだが・・・。

虐げられし者達の復讐③

野沢拓也は、純度100%の鹿島アントラーズ戦士である。ジュニアユース時代から鹿島でプレーし、ユースからトップチームへ昇格して、現在に至っている。

ポジションはMFとFWで、その才能には早くから注目が集まっていた。以前、鹿島を訪れた現日本代表監督のジーコが「ブラジルに連れて帰りたい」とまで絶賛したのは有名なエピソードだ。それが影響したかどうかは分からないが、野沢はジーコの創設したCFZ・ド・リオというブラジルのクラブチームへの留学も経験している。

が、しかし、野沢が持つポテンシャルに対して、何故か出場機会はなかなか増えなかった。やがて「せめてベンチに」が、サブのメンバーにも入れない野沢を支持するサポーターの悲痛な叫びとなっていた。天性のゲームメーカーとしての素質を持っているのに、このまま消えてしまうのだろうか?誰もが半ば諦めかけていた。

だが、今年の野沢はそんな暗い過去の記憶を払拭するかのようにキレている。開幕からFWのポジションでチャンスを掴むと、中心選手としてチームの軸になり、連続ゴールも記録。まるで嘘のような活躍ぶりだ。

残念ながら、好調時に全治二ヶ月の大怪我を負ってしまい、しばらくリーグ戦を欠場していたが、中断期間中に遂に復活。現在はレギュラーFWのアレックス・ミネイロがリタイアしている為、日本代表の鈴木との2トップになりそうだ。

けれど、アレックス・ミネイロが復帰したらどうなるのだろう?おそらく鈴木との激しいポジション争いが待っているに違いない。野沢拓也というフットボーラーが成功するか否か?野沢にとって、今シーズンは重大な分かれ道になる予感がする。

虐げられし者達の復讐②

森崎兄弟はどっちがどっちなのか分からなくなるときがあるが、佐藤兄弟の場合、それはない。何しろ兄弟とは思えないほど風貌が違う。私も始めて知ったときには随分と驚いたものだった。

二人は共にジェフ市原ユース出身の選手であったが、プロの道に進んだ後は違った道を歩み始めた。

FWの寿人はセレッソ大阪に移籍し、さらに次年度にはベガルタ仙台に移籍。結果的に降格してしまったが、シーズンを通してエースとして孤軍奮闘。翌年のJ2では二桁得点をマークし、サンフレッチェ広島への移籍を勝ち取った。自らも尊敬するフィリッポ・インザーギに酷似したスタイルで、ゴールを量産するストライカーに成長した。

MFの勇人はその後もジェフ市原一筋を貫き、オシム監督の門下でフットボールをよく学んだ。3-5-2のダブルボランチのレギュラーに定着してからは、強烈なミドルシュートでゴールを幾度となく奪う。既にジェフにとって、無くてはならない存在になった。

寿人は01年WY組で、勇人はU-22日本代表に召集経験があるが、本格的に代表に定着したことはない。しかし、かつて別の道を選択した兄弟が揃ってブルーのユニフォームに袖を通す日はそれほど遠くないかもしれない。

虐げられし者達の復讐

長谷部誠は代表経験がまるで無い。出身高校こそ静岡の名門・藤枝東高校だったが、現ジュビロ磐田の成岡の影に隠れてしまっていた。よって、高校の時点で代表に声がかかるなど有り得るはずも無い。

運良く浦和レッズのスカウトの目に留まり、入団を果たした長谷部は2年目からオフト監督の信頼を得、トップ下のポジションを掴む。そこにはエジムンドの退団という抜き差しならない状況もあったが、03年WYを目前に数少ないレギュラー選手となった。当然、長谷部は代表に選ばれると目されていた。

だが、長谷部は最終選考で惜しくも落選。当時のチームを率いていたのが選手の好き嫌いの激しい大熊監督だったのも不運だった。ワールドユースにも不出場。その先のアテネオリンピック代表にも選ばれなかった。

それでも長谷部は挫けなかった。04年のシーズンはダブルボランチの一角に定着。大活躍し、ニューヒーロー賞とベストイレブンを受賞。今では雑誌の「誰を日本代表に呼ぶべきか」という趣旨のアンケートを行うと、必ずと言っていいほど上位ないしは一位に輝く。既にクラブレベルでの実績は成岡を遥かに凌ぐ格好になった長谷部。その細身の体からは想像も出来ない芯の通ったフィジカルとフットサル仕込みのドリブルとパスでA代表入りを虎視眈々と狙っている。長谷部の復讐はまだ始まったばかりだ。